クラシック音楽情報【オペラを知る】
歌唱、オーケストラ、演技、衣装、舞台、演出…と総合芸術といわれるオペラ。
上演時間が長い、チケット代が高い、内容がわからない…など、クラシック音楽の中でも敷居が高いと言われます。
でも
こんなに奥深いオペラを愉しまないなんて
もったいない!
主なオペラ一覧は こちら
ファウスト
Faust
ドイツの文豪ゲーテの戯曲『ファウスト』を原作に、「フランス近代歌曲の父」と呼ばれた作曲家グノーがファウストに翻弄されるマルグリートの悲劇の物語としてオペラ化。
老博士ファウストは、悪魔メフィストフェレスに魂を売って永遠の若さを手に入れる。彼は清純な乙女マルグリートと恋に落ちるが彼女を捨て、彼の子を宿したマルグリートは生まれたばかりのわが子を殺し、牢に繋がれ錯乱。彼女の魂は神のもとに召されていく…。
【作曲】シャルル・グノー
Charles Gounod(1818-1893)
【原作】ゲーテの劇詩『ファウスト』
【台本】ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ
【言語】フランス語
【初演】1859年3月19日 リリック劇場(パリ)
【上演時間】全5幕 約3時間10分
第1幕:30分
第2幕:30分
第3幕:50分
第4幕:45分
第5幕:35分
(4幕1場及び第5幕バレエ『ワルプルギスの夜』を省略して上演することも多い)
主な登場人物
ファウスト(テノール):年老いた学者。メフィストフェレスの魔力で若返る
メフィストフェレ(バス):悪魔。ファウストに魂と引き換えに若さを与える
マルグリート(ソプラノ):ファウストと恋仲になる
ヴァランタン(バリトン):マルグリートの兄、兵士
ジーベル(メゾソプラノ):村の若者。ヴァランタンの友人で、マルグリートに恋をしている。
マルト(メゾソプラノ):マルグリートの隣人
あらすじ
【第1幕】16世紀のドイツファウスト博士の書斎
年老いたファウスト博士は、真理の探究に人生を費やした研究は無駄だったと絶望し、服毒自殺を図ろうとする。
しかし外から楽しそうな少女たちの合唱が聞こえ、思いとどまって人生の快楽を呪っていると、紳士の姿をした悪魔メフィストフェレスが現れる。
二重唱『私はここにおります Me voici!』
望みを尋ねられたファウストは「快楽が欲しい!」と答える
『私に快楽を A moi les plaisirs!』
若さと青春の代償としてメフィストフェレスはファウストに死後の魂を渡すように言う。ためらうファウストだが、美しい娘マルグリートの幻影を見せられ、契約書にサインをする。
若返りの薬を飲み若々しい容貌になったファウストはメフィストと共に二重唱『私に快楽を』を初回より半音高く歌い幕となる。
ファウスト:ヨナス・カウフマン(1969‐)
メフィストフェレス:ルネ・パーペ(1964‐)
【第2幕】街の居酒屋
祭りで賑わう広場に、出征を前にしたマルグリットの兄ヴァランタンが現れ、妹を一人残して出征する悩みを歌い(アリア『出征を前に Avant de quitter ces lieux』)ジーベルとワーグナーらにマルグリートを頼む。
そこへメフィスが現れ、この世はすべて金が第一だと『金の子牛の歌 Le veau d’or est toujours debout!』を歌う。
『金の子牛の歌
Le veau d’or est toujours debout!』
メフィストフェレス:ルネ・パーペ(1964‐)
町人に不吉な予言をしたり、魔力を使い悪魔であることがばれて退散する。入れ替わりにファウストがやってきて、幻影の女性マルグリートを見つけ出す。マルグリートに愛を告白するが、慎み深く断られる。
メフィストフェレが「博士、私があなたの恋を手伝いましょう。」と語り、二人は去り、「マルグリートが素敵なセニョールを振った!」と噂の中、ワルツを踊る群衆で幕。
『ワルツ』
管弦楽曲として演奏されることも多い
【3幕】マルグリートの家の庭
村の若者ジーベルが『花の歌 Faites-lui mes aveux』歌い、恋するマルグリートに送ろうとする花が、メフィストの魔法によりすぐに枯れてしまうことを嘆く。しかし、聖水に指を浸すと花が枯れないことに気付き、花束を戸口に掛け立ち去る。
そこにファウストとメフィストフェレスが現れ、ファウストは彼女の暮らしぶりを見て「この清らかな住まいよ。ここに無垢で聖なる魂が宿る!」とアリア『この清らかな住まい Salut! demeure chaste et pure』を歌う。
『この清らかな住まい
Salut! demeure chaste et pure』
フランスオペラのテノールのアリアで屈指の名曲。
ファウスト:ニコライ・ゲッダ(1925-2017)
そしてジーベルの花束の近くに、メフィストの用意した豪華な宝石箱を置いて立ち去る。
マルグリートが『トゥーレの王 Il était un roi de Thulé』を歌いながら現れる。玄関に置かれた宝石を見つけ驚き、身に着けながらアリア『宝石の歌 Air des bijoux』を歌う。
『宝石の歌
Air des bijoux – Jewel song』
マルグリート:マリア・カラス(1923-1977)
隣人マルトがやって来る。続いてファウストとメフィストが戻ってきて四重唱『少しの間でも私の腕を取って Prenez mon bras un moment』を歌う。
メフィストはマルトを口説いて連れ出し、ファウストはマルグリートに愛を告白する。マルグリートは頑なに拒んでいたが、最終的にファウストの愛を受け入れる。
それを見たメフィストフェレが高笑いし、幕が下りる。
【第4幕】3幕の1年後
熱烈な恋の果てにファウストに捨てられ彼の子どもを身ごもっているマルグリートは、糸をつむぎながらアリア『糸紡ぎ車の歌 Il ne revient pas』を歌い彼を想う。
『糸紡ぎ車の歌
Il ne revient pas』
マルグリート: ガブリエラ・ベニャチコヴァー(1947‐)
ジーベルがやってきてマルグリートを慰め、ファウストに復讐すると言うが、マルグリートはそれを拒む。
マルグリートが教会でひとり祈っていると、悪魔の声が渦巻き、メフィストの「地獄に落ちよ!」の声に彼女は意識を失う。
街中では『兵士の合唱 Soldiers Chorus』と共に、兵士たちが帰還する。
『兵士の合唱
Soldiers Chorus』
マルグリートの兄ヴァランタンも戻ってくる。兵士たちは『我らの父祖の不滅の栄誉 Gloire immortelle』を合唱する。
『我らの父祖の不滅の栄誉
Gloire immortelle』
マルグリートの家の前にファウストとメフィストがやって来る。公開をしているファウストに対し、メフィストは『眠った振りをせずに Vous qui faites l’endormie』を歌い、マルグリートを嘲笑う。
ヴァランタンは、妹のマルグリートが未婚の母になったと聞き激怒して、ファウストに決闘を申し込む。メフィストの悪力を借りたファウストに負けたヴァランタンは、妹マルグリートを呪いながら絶命する。
【第5幕】
『鬼火の合唱』にのって、ファウストはワルプルギスの夜の騒ぎの中に連れて来られ、次々と快楽の限りを体験させる。次々に美女が現れ、踊るバレエの場面『ワルプルギスの夜』となる。
ファウストは踊る美女たちのなかにマルグリートの幻影を見る。
生まれた子供を殺した罪で牢獄の中にいるマルグリートに再会したファウスト。二人は愛の二重唱『そう、それは私だ!愛している!Oui, c’est moi, je t’aime!』を歌う。
そこへメフィストが現れ、フィナーレの三重唱となる。
ファウストはマルグリートを牢獄から逃れさせようとするが、錯乱状態にある彼女にはメフィストが悪魔であることがはっきりと見え、それを頑なに拒む。
マルグリートが神に祈ると、天使たちの合唱『救われた!キリストはよみがえられた!Sauvée! Christ est ressuscité!』が聞こえ、マルグリートは神の元に召され、魂は昇天する。
ファウストは天に祈りを捧げ、メフィストは大天使ミカエルの剣により倒される。
Finale
マルグリート:マリーナ・ポプラフスカヤ
ファウスト:ヨナス・カウフマン
メフィスト:ルネ・パーペ
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