『スペードの女王』-オペラを知る

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歌唱、オーケストラ、演技、衣装、舞台、演出…と総合芸術といわれるオペラ。

上演時間が長い、チケット代が高い、内容がわからない…など、クラシック音楽の中でも敷居が高いと言われます。

でも
こんなに奥深いオペラを愉しまないなんて
もったいない!

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スペードの女王
 Пиковая дама
The Queen of Spades

チャイコフスキーが書いた10作のオペラの中で、最晩年に書かれたプーシキン原作『スペードの女王』は彼の最高傑作とも言われる。

ゲルマンは身分違いの伯爵夫人の孫リーザを愛したが、カード賭博の“3枚の勝ち札”の秘密にとり憑かれ、彼女を利用し傷つけ、カードの秘密を知る伯爵夫人の命を奪う。絶望したリーザは自ら身を投げ命を落とし、狂いゆく精神の中で現実と幻想がカオスとなり、ゲルマンも自害し、幕を閉じる。

【作曲】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
Peter Ilyich Tchaikovsky(1840-1893)
【原作】アレクサンドル・プーシキン(1799-1837)同名小説
【台本】モデスト・チャイコフスキー(1850–1916)(作曲家の弟)
【言語】ロシア語
【初演】1890年12月19日 マリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)
【上演時間】2時間30分

主な登場人物

ゲルマン(テノール):リーザに恋する。「3枚のカードの秘密」の虜となり、人生を破滅させる。
トムスキー伯爵(バリトン):ゲルマンの友人
リーザ(ソプラノ):ゲルマンになぜか惹かれていく
エレツキー公爵(バリトン):リーザの婚約者
伯爵夫人(メゾソプラノ):リーザの祖母、「3枚のカードの秘密」を知っている
チェカリンスキー(テノール):士官
スーリン(バリトン):士官
ポリーナ(Ms)、マーシャ(S)等

あらすじ

【第1幕】18世紀末:ペテルブルク(現サンクトペテルブルク)

第1場 夏の公園

子供たちが公園で兵隊ごっこをして遊び、それを子守や家庭教師たちが見守っている。
そこに二人の士官チェカリンスキーとスーリンが、士官ゲルマンは賭博場で他の人が賭けているのを朝まで見ているだけの貧乏な変わり者だと噂をしている。
そこへゲルマンが友人のトムスキー伯爵と一緒に現れ、二人の士官は立ち去る。
ゲルマンは名も知らぬ令嬢に身分違いの恋をしてしまったと伯爵に相談し、「この恋が破れたら死ぬしかない…」と思い詰めている。

『Ya imeni yeyo ne znayu』

そこにエレツキー公爵が婚約者リーザとその祖母である伯爵夫人と登場し、彼女から結婚の承諾をもらい今日は幸せな日だと歌う。
それを聞いてゲルマンは驚愕する。その婚約者こそ、ゲルマンが密かに恋する女性だった。

リーザと伯爵夫人は、自分たちを凝視するゲルマンを見て、恐怖にとらわれる。

衝撃を受け絶望するゲルマンにトムスキー伯爵は「スペードの女王」と呼ばれる伯爵夫人の噂を話しはじめる。

伯爵夫人は若い頃、パリのベルサイユ宮殿で「モスクワのビーナス」と噂されるほどの美女で、若い男達は皆彼女に夢中になっていた。その中のひとりサン・ジェルマン伯爵も彼女に言い寄るがなかなかものにできない。
そのうち伯爵夫人はカード賭博に大敗し財産を失い、サン・ジェルマン伯爵から”3 枚の勝ち札”を教える代わりに自分の想いを受け入れるよう迫られ、やむを得ずそれを受け入れる。
彼女はその勝ち札で大勝ちをおさめて財産を取り戻し、その秘密を夫に教え、息子も知ることになった。
すると幽霊が現れ「”3枚の勝ち札”を力づくで知ろうとする男に殺されるであろう」という不吉な予告を受け、それ以来カード賭博は一切行わなくなってしまった。…という噂を歌う。


激しい雷雨が訪れ、皆が立ち去る。
それを聞いたゲルマンは、第3の男として”3枚の勝ち札”の秘密を聞き出し大金を手に入れれば、貧しい自分でもリーザを手に入れることができる、と密かに野望を抱き始める。
それができなければ死ぬだけだと言い幕となる。

第2場 リーザの部屋

リーザと彼女の友達ポリーナとがピアノの伴奏で歌っている。

皆に請われて、ポリーナがリーザの好きな歌を歌う。

ポリーナや女性たちが明るいロシアの歌を歌いながら皆が踊っていると、家庭教師に叱られ、皆は去っていく。
一人になったリーザは「私は婚約者より、あの暗い悲し気な人(ゲルマン)が気になっている」と涙する。『Zachem zhe eti slyozy

『Zachem zhe eti slyozy』

そこへ、ゲルマンがバルコニーから入ってきて愛を訴える。最初は拒んでいたリーザもついに、その愛を受け入れる。

【 第2幕 】

第1場 仮面舞踏会

賑やかな仮面舞踏会で、チェカリンスキー、スーリン、トムスキーが「最近ゲルマンは”3つの勝ち札”の秘密に夢中で狂ってる」と、ゲルマンの噂をしている。
そこにエレツキー公爵とリーザが現れる。
婚約披露日にもかかわらず、暗い表情のリーザにエレツキー公爵は彼女への愛を歌う。

ゲルマンは、リーザからの”会いたい”と書かれたメモを読んでいる。
3つのカードのことで頭がいっぱいのゲルマンに、リーザは部屋の鍵を渡し、後で会いましょうと言って立ち去り、ゲルマンは「これで”3枚のカードの秘密”を知ることができる!」と興奮する。
エカチェリーナ女帝が現れ、幕となる。

第2場 伯爵夫人の寝室

ゲルマンが部屋に忍び込むと、伯爵夫人が帰ってきたため、ゲルマンは物陰に隠れる。
伯爵夫人が昔を懐かしみ、有名なアリオーソ『Je Crains De Lui Parler La Nuit』を歌う。

『Je Crains De Lui Parler La Nuit』

ゲルマンが突然伯爵夫人の前にあらわれ”3枚の勝ち札”の秘密を教えてほしいと頼む。
渋る伯爵夫人にゲルマンは思わずピストルを出すと、伯爵夫人はそれを見て驚いて死んでしまい、秘密を知ることができなかった。

物音を聞いたリーザが現れ、伯爵夫人の死に驚き、ゲルマンは勝ち札の秘密を知るために自分を利用したのだと彼を責め、追い出す。
ゲルマンが去っていく一方で、リーザは伯爵夫人の亡骸を前に泣き崩れるのだった。

『第2幕 Final scene』

指揮:V.ゲルギエフ
メトロポリタン歌劇場(1999)

【第3幕】半年後

第1場 ゲルマンの部屋


ゲルマンがリーザからの手紙を読んでいる。
手紙には「ゲルマンが故意に伯爵夫人を殺したのではないと信じている。今夜堤防で会いましょう」と書かれている。

すっかり憔悴しきったゲルマンの前に、伯爵夫人の亡霊が現れ「リーザと結婚するなら、勝ち札の秘密を教える。それは、3(トロイカ)、7(セミョルカ)、A(トゥス)だ。」と秘密を告げて去っていく。

第2場 川岸

川岸でゲルマンを待つリーザ。ゲルマンはなかなか現れず、彼への疑いが晴れず苦しんでいる。
ゲルマンが現れ、ひと時の愛を確かめ合う。
しかし、リーザにカードの秘密を知ったことを話し、伯爵夫人に向けてピストルを見せただけで殺してはいないと言い、一緒に逃げようという彼女を振り切り、もはや野望にとりつかれたゲルマンはリーザを置いてひとり賭博場へ向かう。絶望したリーザは、ネヴァ川(エルミタージュ橋)に身をなげて亡くなる。 最後の望みを胸にゲルマンに逢いたいと運河のほとりで待つリーザ。絶望したリーザは運 河に身を投げる。

第3場 賭博場

”飲んで楽しもう、命を懸けて楽しもう、青春は長くない”と多くの人が賭博場で遊んでいる。エレツキー公爵も「恋に破れたものは、賭けに恵まれる」と、初めて賭けに参加する。
そこにゲルマンが現れ、全財産を賭けて「カードの秘密」の通りに賭け次々と勝利するゲルマンに、皆は驚く。

ゲルマンは有頂天になり「我々の人生とは何か~それは”賭け”だ」と歌”う。
ゲルマンの3度目の対戦相手には、皆が止める中リーザのことで決着をつけるためにエレツキー公爵が名乗り出る。
ゲルマンは勝ち誇ったように「A(トゥス)」だといってめくるが、そのカードは「スペードのクイーン」で、彼は負けてしまう。

全てを失い、もはや正気ではないゲルマンは、伯爵夫人の亡霊を見て狂乱し短剣で自らの胸を刺す。そしてエレツキー公爵に謝罪し、リーザの亡霊に「君を愛している!」と叫び、息絶える。

皆が「彼を許してください!」と神に歌う中でオペラは幕を閉じる。

フィナーレ

「神よ、彼を赦したまえ」Gospod! Prosti Yemu!

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